マルニ木工が作るべきものとは何か、原点とは何かを探るため、開発パートナーにプロダクトデザイナーの深澤直人を迎え、100 年使っても飽きのこないデザインと堅牢さを兼ね備えた家具作りをめざしました。国際的なデザイン感覚と日本独自の木に対する美意識、そして精緻なモノ造りの技が融合したこのプロダクトは、マルニ木工にしか生み得ない「日本から世界に発信する家具」であり、匠の技が生んだ美しさの結晶です。
マルニ木工は、「MARUNI COLLECTION」を世界に誇る日本発の家具ブランドとして確立するため、更なる高みを目指し世界に通用する日本の美しい家具づくりを日々進めています。
MARUNI COLLECTIONの代表作とも言える、HIROSHIMAは木本来が持つ質感を十分に生かし、使用シーンを限定せずに、あらゆる場所で使えることを想定したシンプルで精緻な構造の椅子です。背からアームにかけての緩やかなカーブは見た目も美しく、ずっと撫でていたいと思うほどの滑らかさです。ゆったり目の座はダイニングチェアとしてだけではなくラウンジチェアとしても使えます、テーブルや椅子の座、そしてアームチェアの側面の形状は、光のあたる天面をより美しく強調します。HIROSHIMAはマルニ木工の技術と、普遍的なデザインが見事に融合した、まさに日本を代表する世界的に愛される椅子です。
MARUNI COLLECTIONの進化は続きます。ファッションブランドの、ミナ ぺルホネンとコラボレートし、座面のファブリックに新たな選択肢を増やしました。
“dop”と名付けられたこの生地は、使い込むうちに摩擦で表面の糸が擦り減り、裏面の色が現れてくる性質を持ち、劣化するというのではなく時間をかけて変化し永く愛用していただけるよう考えられデザインされています。また“dop”はイタリア語の“doppio”=「ダブル」に由来します。裏表が異なる表情を持つダブルフェイスによる生地は、どちらも表としてとらえることができます。木や革などの素材を用いた家具は、人によって使い込まれることで長い年月を経て徐々に風合いが変化し、それに伴い生まれる独特の味わいが、さらなる魅力、価値としてとらえられます。“dop”は木や革と同じように、生地自体が年月の中で変化し、擦り切れたところからのぞく新しい色を楽しむことができます。長い年月の中で、家具に張られた生地もまた、形や色を変化させながら、使う人の癖や使う場所の空気までも染み込み愛着が湧いていく、そのような想いが込められています。
日本の工場で織られている“dop”の生地は、日本で好まれやすい落ち着いた色から、暮らしのアクセントになるヴィヴィッドな色まで、色の組み合わせを17種、両面の色を含めると34種あります。
柄ものの生地には、ミナぺルホネンを代表する柄-choucho-と-tambourine-があります。
-choucho-
繊細に起毛した滑らかな肌触りの生地に、穏やかな空気の中をふわりと舞うちょうちょの様子を刺繍しています。一つ一つ刺繍されているぷっくりとした小さな蝶は、いろいろな模様の羽を持ち、さまざまな方向へ軽やかに自由に舞っています。花や枝に羽を休める蝶の姿を借りて、周りのやわらかな空気が描かれています。
-tambourine-
小さなドットの刺繍が集まり輪を描いています。円は正円ではなくフリーハンドで描いた円で、配置されたドットの間隔は不均一です。遠くから見たときには同じように見えるのに、よく見るとドットのそれぞれの刺繍、ふくらみや形には微妙な違いがあります。
どちらの柄も見ていると微笑ましく、不思議とずっと眺めていたくなる気持ちにさせてくれます。木の持つ柔らかな雰囲気にとても合います。
マルニ木工とミナ ぺルホネン、業種は違えどモノを生み出す姿勢・考えは同じといえます。マルニ木工のこだわりぬいて妥協を許さず制作された家具は、細部にまで本当によくデザインされており、「ここが良い」と言える箇所がいくつもいくつもあります。素材の持つ特性を十分に熟知し、機械と人の手がバランスよく共同して作られた家具には、魅力が溢れています。また、その魅力をさらに引き出したのがミナ ぺルホネンの生地です。カラーバリエーションの豊富さ、手作業での刺繍、しっかりと人の手が行き届いています。家具の経年変化を美しむという理念を生地にまで昇華させ、生産された家具ではあるけれど、持主だけのたったひとつの家具になる手助けをしてくれています。
人の手が感じられる作り手の一生使って欲しい、一生使えるものを作ったという心意気をぜひ肌で感じて欲しいです。変わりゆくさまこそが、美しい。日本の美意識を持つこの家具を味わってみてください。
1995年、デザイナー皆川 明によりファッションブランド「ミナ(2003年よりミナ ペルホネン)」が設立される。社会への考察や自然への詩情から図案を描き、織りやプリント、刺繍などのテキスタイルをオリジナルにデザインしている。2006年「毎日ファッション大賞」大賞を受賞。近年は家具やうつわなどの生活デザイン、青森県立美術館、東京スカイツリーRのユニフォームのデザインも手がける。